それは突然やってくる
また一人、才能あふれる芸能人の方が亡くなりました。
偶然、数週間前の旅番組に出演されていたのを見て、お元気そうね、と思っていたのですが。
状況からして自殺ではないかと言われているのですが、自殺なんて、と思っている人からすれば、なんて馬鹿なことを、と思うのかもしれません。
私も数年前であれば、そう思ったことでしょう。
しかし、それは突然やってきました。
ちょうど一年前になりますが、新しく配属された先の上司とウマが合わず、怒られてばかりの毎日を過ごしていた私は、その日も打ち合わせでもこっぴどく怒られていました。
それでも何とか乗り切って、ほっと一安心した帰り道、特急電車が通過するのをベンチに座って待っていると、突然、ベンチから立ち上がり、線路に飛び込む、というイメージが頭の中に浮かんできたのです。
思わず、いやいやいやと自分自身に突っ込みを入れたのですが、すぐにまたベンチから立ち上がり、線路に飛び込むというイメージが繰り返し浮かんできたのです。
もう何度も何度も。
そうやって何度も何度も線路に飛び込むイメージを繰り返されると、最初は笑ってやり過ごしても、だんだんその気になってきて、これはもう飛び込まなきゃいけないんじゃないかという気持ちになってきたのです。
ちょうど、若い芸人さんが、高い飛び込み台に連れていかれて、さあ飛び込みなさいと言われているような感覚です。
嫌なんだけど、行かなきゃいけない。
行かないと、みんなに迷惑をかけることになってしまう。
さあ、行け。
行け。
3つ数えたら、さあ行くぞ。
私は、そこでかろうじて我に返り、慌てて立ち上がって線路から距離を置くことで、通過する特急電車をやり過ごすことができました。
翌日、私は異動を申し出て、悔しい、悲しい思いもいろいろしましたが、自分で何とかできるうちに自分で対処することができて本当に良かったと思うと同時に、自分で何とかできなくなることもあるんだな、ということを知りました。
あのまま、目を閉じて座っていたら、おそらくダメだっただろうな、と今でも思います。
お酒を飲んでいたら、もっと疲れていたら。
おそらくダメだっただろうなと思います。
つらい時は案外平気なものです。
むしろ危ないのは、それを乗り越えた後。
死のうという衝動は、思い止まるとか、冷静に考えるとか、理性とは全く違うルートで、突然、ダイレクトにやってきます。
皆さんも、他人事とは思わず、ご注意を。